梅雨入りの前に

子育てをともに考えるニュースレター
2006年 6月号 て・くむ                                  (te cum: ラテン語「あなたとともに」の意)

        愛された子どもは愛することができるおとなになる    
         海の星カトリック幼稚園 園長  神馬  久美

         510−0063四日市市十七軒町2-4 ☎059−354−1726
         http://www.cty-net.ne.jp/~umi-hoshi/ 
                                                                 

6月の聖句                                         主のうちにあっていつも喜びなさい。重ねて言うが、喜びなさい。         〔フィリピの信徒への手紙 4章 4〜5節〕


 金曜日早朝、教会のお聖堂には必ず掃除機をかけておられるTさんの姿があります。電車の運転士を退職されたTさんはいつもにこやかに、すすんで教会の仕事を、また時には幼稚園の修繕などの仕事も引き受けてくださいます。また、Nさんは園の園芸の「師匠」です。リウマチの持病があると聞きますがいつもその顔は輝いているようで、私たちの「野菜畑」を覗いては、「先生、きゅうりが伸びるから、毎日見てつるを結んでやらにゃいかん。」と、厳しく指導。でも、必ずにこっと、美しい笑顔を見せてくださいます。
 先日BS2の「熱中時間」という番組で紹介されていた廣澤さんという方は、鉄製の竹馬で(つまり、足を一歩も地面につけず)富士山やキリマンジャロ登頂に成功、60歳をこえた今も毎日体を鍛えているとのことでした。その表情は実に穏やかで、「苦難こそ修行の場です。」と、苦労をも楽しみにしている様子。家族や周りの人もいっしょにいると生き生きしてしまうようで、その信念は信仰に近いものに見えました。
 神様に喜んでもらえるのはうれしいことです。同じ人生なら、喜んで神様に守られ支えられていたい。同じ1日、しかめっ面よりも大きな微笑みのうちにおくりたいものですね。




    
                                      ♬          すてきなようちえん
                       ♪                       (園で見かけたすてきなできごとをご紹介します。)

★ 「神様のお話」の時間、時々音楽鑑賞をする試みをしています。シューベルトの「アヴェ マリア」を聞いた後、すみれ組さんの感想は、「目をつむっていたら、マリアさまがすぐ前に立っているみたいだった。」「天使がうしろから歌っているみたいだった。」など。お話も落ち着いてよく聞いてくれます。
★ 今にも降り出しそうな朝、ゆりぐみさんの数名だけは手押し車にスコップをたくさん積んで走り回っています。園庭のくぼみを埋めていたじんばもんばのお手伝いをして、「雨が降ってきたから、おかたづけ。」の声がかかると、スコップをちゃんと集めてからお部屋に帰ってゆきました。すっかり、『海の星』の子どもになってきたね。
★ ばらぐみは「メリーさんのひつじ」の歌にあわせての数集めゲームが最近お気に入りです。3人または、4人と、先生の指示に従ってグループを作ります。「ふたり!」と言われて、次々とペアができ、残ったのは男の子ふたり。おや、さっきブロックの取り合いをしていた二人です。ちょっとばつの悪そうな顔で離れ気味でしたが、歌が始まると互いに両手を合わせ、にっこり。喧嘩をしてもすぐ仲直りできるってすてきですね。
★ 「せんせい、トイレットロールがないの。」とAちゃん、Cちゃんが呼びにきました。ロールを持っていくと、「わたし、できるから。」と、トイレを全部チェックして取り替えてくれました。


☆ 遠足は雨でしたが川越電力館「テラ46」を楽しく探索。昼食時もお帰りの集合も、皆様のご協力でスムーズにできました。
☆ 講演会には40名ほどのお母様が出席され有意義な時間でした。大まかな内容と感想の一部を後ろに掲載しています。
☆ マリア祭に多数のご参加ありがとうございました。プログラムに、園章の図案の解説を載せました。参考にしてください。
☆ 5月25日、年長のすみれ組は諏訪交番を訪問し、おまわりさんに感謝を表しました。パトカーも見せてもらいました。
☆ 役員の皆様が、花壇の植え替えをしてくださいました。「畑」にはキュウリ、トマト、スイカ、ジャガイモが育っています。

The biblical phrase of this month—May you always be
joyful in your union with the Lord. I say it again:
rejoice. (Philippians 4:4~5)
Early Friday morning, Mr. T is always at our chapel,
vacuuming the floor joyfully. He seems to be enjoying
helping out our church and kindergarten after he retired.
Mr. N is the best and strict ‘instructor’ of our
vegetable yard. Though he suffers from joint rheumatism,
he wears beautiful smiles while working faithfully.
Recently I saw a gentleman on a TV program, who climbed
Mt. Fuji and Mt. Kilimanjaro on his stilts. He says,
“Any difficulty gives me a chance of training.” He
looked calm and happy. It would be much better to be
joyful than make grimaces. Knowing that you are loved
by God gives you smiles.

Sutekina Yochien
* Sumire children’s comments after listening to
Ave Maria” by Shubert: It was as if St. Mary was standing
in front of us; It sounded like angels were singing from our
back. They can concentrate on Kamisama no Ohanashi.
* Rain was about to fall, but Yuri children don’t
bother and played outside. As soon as it started raining,
they rushed to get inside but did not forget to collect all
the shovels. They certainly are learning.
* Bara children like the group-making game. When
their teacher said, “ Two!”, they got together to make
pairs. The last two boys left happened to be the ones who
had had a fight a while ago. They stood apart for a moment
but as the music started, they stretched their hands to
cach other and smiled.
* A-chan and C-chan came, asking for a toilet roll.
As I brought them one, they said they can manage
themselves and checked all booths, replacing the new ones.

いしがきせいかちゃんのかわいい詩をご紹介します。中日「お母さんのの詩」コンクールで佳作でした。せいかちゃんは同「お父さんの詩」コンクールでは最優秀の中日賞を受賞し、その作品は中日新聞に掲載されるそうです。たのしみです。応募作品は全点中部近鉄百貨店で展示されます。(6月16日〜21日)幼児の部の作品はどれもとっても感動的で、私は「お母さんの詩」「お父さんの詩」とも、見に行くたびに、その場を離れられなくなってしまいます。皆様も足を運んで、すてきな時間をつくってみてください。
                           
       にこにこがおのおかあさん      いしがき せいか
 おかあさんが おふろにはいっているとき、おひるごはんを たべているとき、だいすきなぱっちわーくを しているとき、わたしといっしょに おはなを うえたとき、わたしが おかあさんのおてつだいをしたとき、おかあさんは にこにこがおになります。いつもおかあさんは にこにこがおで いることがとってもすきだから、いつまでもそのにこにこがおでいてくださいね。  
 

「子育て」を考える保護者のための講演会「神様の愛、親の愛」5月19日 

                           浜崎敦神父様
 
 名作戯曲『どろかぶら』(1927年)の中で、孤児になってしまった主人公たみは顔がかぶのように丸かったため「どろかぶら」と呼ばれいじめられ、卑屈になっていった。ある時、僧が幸せになるために守るべき3つのことを教えてくれる。―①いつも、どんなときにもにっこり笑う。②いつも人の身になって考える。③決して自分の顔を恥じない。だんだん心を開いたどろかぶらは絶対守って幸せになると約束する。しかし、村一番のお金持ちから命より大切にしている壷を壊したと濡れ衣を着せられ、黙ってせっかんを受けて、あの約束は守れないと、血を流しながら考える。ところがその壷を壊したお金持ちの娘があやまり、友達になってほしいと頼むので、僧の言葉は本当だったとわかる。どろかぶらはだんだん人気者になりいつも村人から頼りにされる。極貧のため売られていく娘の身代わりになるとまで申し出て人買いに連れられてゆくが、人買いもどろかぶらの優しさに心を打たれて目を覚まし、置き手紙をしたためて去ってしまう。という、感動的な逸話を味わって考えてみてほしい。③の「自分の顔を決して恥じない。」だけを考えてみよう。プチ整形の流行する現代は、鼻が低いまたは体がスラリとしていないと女性としての価値が低いように思われ、すべてが「〜ができないと、認められない」という条件付きの競争社会となっている。しかし、家庭は無条件で愛される場所でなければならない。相田みつを氏の詩「トマトとメロン」を紹介する。「トマトもメロンもそれぞれに自分の命を百点満点に生きているんだよ。・・・メロンになれと、尻ひっぱたかれてノイローゼになったり、やけのやんぱちで暴れたりしているトマトがいっぱいいるんじゃないかなあ。」マザーテレサカルカッタの路上で見つけて介抱したのは、もっとも助かる見込みのない人たちだった。体をきよめ、名前、宗教を聞いて食べ物を自ら与えた。この人たちは、「生まれて初めて愛された。生まれてきてよかった。」と言って息を引き取っていった。お母さんの、子どもにささげる愛は無条件である。少年刑務所に服役中の少年たち(講師は複数の少年刑務所で服役中の少年を指導している)も、罪を犯しても受け入れてくれる母親の無償の愛を知って更生していく。『五体不満足』の乙武洋匡氏も、その母から「まあ、かわいい!」と受け入れられて、今がある。首から下の神経が麻痺する障害を負った星野富弘氏の母も「くそばばあ!」とののしった息子の苦しみを受け止め、その後彼の頬に止まったハエをたたかず、そっと手ではらった。(『愛、深き淵より』より) 京都小学生殺人犯の少年の母の手記『少年Aを生んで』にも、どんな事があっても見捨てることはない母の無上の愛が表れている。神の愛は、親の愛をも超える無上の愛である。聖書は「求めなさい、そうすれば与えられる。」と招き、完全な神があなたがたに悪いものを与えるはずはないという。そして、「あなた方の父が完全であるように、完全なものとなれ。」と説く。「完全なもの=シャレム」とはあなたがあなたらしくあるということ。自分の持っているものに自信を持たせ、たとえ親には限界があっても、あなたを見守ってくれるかた(神)がいると子どもたちに知らせていくということは、とても大切なことである。
講演を聞いての感想の一部を要約・抜粋してご紹介します。お書きいただきましたものはすべて浜崎神父様にお届けしました。
* 神父様がおっしゃったとおり、親というのは、一番に私たち子供のことを考えてくれていました。私も親を大事にし、自分の子供たちにもとびきりの愛情を今まで以上に注いでいきたいと思いました。
* 「どろかぶら」の話を聞いて、自分でも読んでみたいと思いました。受刑者の話で、母親の無条件の愛、無償の愛に心打たれました。
* 日常生活の中で子供の自立のためと思い声かけていることも、条件や競争をうながしてはいないのかと、自問しながら子育てをしていきたいです。
* 「完璧」「シャレム」の意味は納得ができ、子供には自分らしく頑張って生きて欲しいと思いました。親の欲はなるべく持たず、周りに影響されず。
* 神父様のお話、とても身にしみました。知らず知らずのうちに子供たちに条件を押し付けていました。良い子に育てなきゃという思いだけで頭の中はいっぱいになってました。今日踏みとどまって見直すことができて、本当に良かったです。
* 子供をしかりつける事が多い中、考えさせられました。大きな心をもたなければと反省させられました。
* 「どろかぶら」の話の中の、幸せになるための3つの条件は、自分自身、1つでも実行しなければ。子供に対して、比較せず、無償の愛をあたえることを常に頭の中に置いておこうと思います。
* 兄弟がいるので、つい比べたり、お兄ちゃんでしょと言ってしまいます。また親の理想に近づけようと、縛っているかもしれないと思いました。
* あらためて親の無条件の愛情の大切さを感じ、最近、人に比較して子育てをしがちなところに、はっとさせられました。
* ついつい「こうなってほしい」「こうすればいいのに」と思いがちですが、子どもが生まれたときのことを思い出して子育てをしていこうと思います。
* このようなお話を聞く機会はなかなかないのでありがたいと思います。今日は子供に愛しているとちゃんと伝えようと思いました。
* 子どもに対しての接し方、時間の過ごし方を見直して、生きていること、何事にも感謝して生活することを子供と一緒に学びたいと思います。
* 毎日の生活の中でイライラしていた部分がスーととけていく感じで、やはり、来てよかった。無償の愛に向かって、頑張れる力をいただきました。
* 私自身の両親からの愛情に感謝し、「おかあさん大好き」と私を求めてくれる娘たちに感謝し、胸があたたかくなりました。
* 「自分の母親」の素晴らしさを再確認させていただき、同時に母親として、人間としての自分の未熟さを思い知らされました。
* とてもわかりやすく聞きやすいお話でした。五体満足であればと思っていながら、生まれてくれば、今度は別の事を望んでしまう。親の勝手な都合のよい条件でしばりつけ、子供本来の持ち味をなくしてしまうような子育てや周りの社会・・・いろいろ考えさせられました。
* 「無償の愛」「無上のあい」=幼稚園のモットー”愛された子どもは愛することができるおとなになる“ですよね。相田みつをさんの「トマトとメロン」がとてもよい詩だったので、食卓の机とカバーの間にはさみました。ついつい子どもに行きすぎた要求や期待をしがちな私への警告書として。
会場出口では、あるお母さんのこんなすてきなコメントが聞こえてきました。
「私は子どもの無償の愛に驚いちゃう。こんなに叱ってばかりいるのに、『ママ大好き!』って、必ずゆるして寄って来てくれるでしょう!」